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一時性の中の永遠性

秋田県美郷町長 松田 知己

先日ある美術展で、フランスの詩人ボードレールの文章に邂逅しました。「現在を生きる画家に求めるものは、「一時的なものから永遠的なものを抽出すること」をめざす態度である」。芸術の本質ではないかと思いました。しばし、その言葉の深みを思慮していると、ふとある記憶を思い出しました。

20年以上前、県職員として欧州に行かせてもらった際の記憶です。その研修はすべてを自分で準備する研修で、研修先や通訳の手配、移動手段や宿泊先の確保など難儀しましたが、主目的の農業施策研修に加え、余暇時間には街を歩き、ルーブル美術館など美術館も回り、広く啓発を受けました。

思い出した記憶は、そのルーブル美術館で「ミロのヴィーナス」を見たときのことです。身じろぎせずに鑑賞しました。その理由は「美しさ」です。紀元前の彫刻が放つ「美」に、20世紀を生きる私の何かが共鳴し、美について黙考しました。その時は整理できませんでしたが、今、ボードレールの言葉に触れ、「そういうことだったんだ」と得心した次第です。一時性と永遠性、芸術の核心として紀元前から求めてきたことなのだろうと思います。

さて今月末、町では平成17年2月の美郷町合併記念式典の際に封印したタイムカプセルを開封します。当時の町内全児童の10年後の自分に向けたメッセージ等が入っています。当時の企画の意図は、過去と現在の違いを受け止めることによって成長の実感や時間の意味、そして合併に対する認識を深めてもらうことでした。しかしよく考えてみると、もっと深い意義があるように思います。一時点での将来への期待は、純粋な子どもの心であるが故に「未来」に対する期待の普遍性、永遠性が含まれているように思うからです。成長に従い現実が見え、やや委縮した期待に陥りがちではないかと思いますが、それを排除したところにあるものこそ「期待」の核心であり、永遠性なのだろうと思います。だからこそ「童心」が大切なのだと私は思います。

その時点の自分が将来に何を期待し、また成長した自分がそれを見てどう思うのか、楽しみなところです。大切にしてもらいたいと思います。

(広報「美郷」平成27年3月号より)

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